長い日曜日 6(完)

午前十時

NEXCOが思いついた新しいサービスのおかけで「一時退出」を許されて、どうにか腹を満たすことのできたBongoが十和田インターから再び、高速の本線へと戻っていく。それまで我慢していた右足は解かれて、失った時間をたぐり寄せようと追越車線を駆け抜ける。景色は急いで流れていって、見渡す限りに広がるリンゴの木々の彼方には、岩木山がおだやかに霞んでいた。

午前十一時

人に話せる速度まで十分に減速してから、本州最北の一般国道に合流する。港町へ。昔とは逆からたどる瞳にはただ、初めてのあの真夏の熱も映ってはこないし、ねぶた祭の賑わいも記憶の欠片すら見つけられない。あの頃と同じものがあるとすれば、それは2ストロークのマシンに乗っていることぐらい。もう誰もあの頃のように、単車で後を駆けてくることはない。

「青森にもベイブリッジができたんだよ」、青森出身で同じ職場だったいとちゃんに教えてもらった橋が、港の端に大きな弧を渡している。不二家のぺこちゃんにそっくりだった懐かしい同僚の顔を思い出してすぐ、広いだけの国道をナビゲーションの声に言われるまま、左へと折れていく。ひとつ陸橋を渡るとようやく、「青函フェリー」の看板を掲げる灰色のビルが見えてきた。

高速道路を使い、ほとんど半日を走りきってなお届かないところにひとり、ryoは待っている。