見覚えのある、その背中に。 2

フロントウインドウ越しに、ただ景色を眺めているだけの二人に後ろの荷室から、くぅんとネロが鼻を鳴らし、「降ろしてくれよ」とねだってきた。一瞬止まった時間が再び動き出して、助手席から降りたryoが受付小屋、「小屋」と言っては失礼なくらいに立派な三角屋根の建物に向かって、急いで駆けていった。

「昨日はねぇ、ずいぶんいっぱい居たんだよ」

ryoと連れ立つように外に出てきた初老の男性が、昨日の空を懐かしむように、目を細めながら教えてくれた。海峡を渡っても水曜日の雨予報は変わらなかった。断られるのを承知で今朝、電話をし続けたら・・・快く予約を変更してくれた。電話の主が、この穏やかな男性らしい。物腰がそのまま人柄のような人だった。

そして「昨日の荒れたままで申し訳ないけど」と、それは本当に申し訳なさそうに、関東からわざわざ走りにやってきた連中を思いやる。

<つづく>