見覚えのある、その背中に。 6

<10/17の続き>

たしかに見覚えのある、丸い小さな背中には、星を模したエナジードリンクのマークが肩口から斜めに描かれている。それが夏の名残のヒカリに鮮やかな赤を映していた。右肩に爆弾を抱えたまま、ジャージの上にブレストガードを背負い込む格好は、ひとつも変わっていなかった。

「すっかりさび付いているんじゃないのか」

互いに秘めていた思いは、わずか一周で消し飛んだ。フィニッシュジャンプを越えて二周目、左に下りながら大きな右バンクへと加速する背中が、4ストロークの爆裂音を引き連れて、さらに丸く小さくなっていく。その後ろ姿を見るためだけに私は、ここまできたのかもしれない。

<つづく>