見覚えのある、その背中に。 9

ずうっと下まで何本もの轍が走り、灰色の路面は緩く凹凸を繰り返す。広くて長い下り坂。弱気な右手にRMのフロントタイヤは、何度も逃げていく。それなのにCRFは、ここを自在に駆け抜ける。途中、ハイサイドを喰らってフッ飛ばされても、その勢いは、見上げる空のように曇ることはなかった。

坂の下でマシンを左に曲げると、路面は急に勾配を見せる。そして、すぐに訪れる頂点を右に折れるようにして、一気に落ちていく。「シケイン」と二人で呼んだそこの餌食になったのは、黄色いマシンの方だった。砂に埋もれたハンドルバーを引き抜いて、落ちきった先の左を直角に曲がっていく。

短い直線で気持ちとマシンを一緒に立て直し、右にジャンプしながら、なだらかな下りを駆け抜ける。インでもアウトでも、ど真ん中でも。全開で好きにラインを刻みつけながら、見慣れてきた右のタイトターンを鋭く切り取り、アウトサイドに土の壁が立つ短い左ベントを、勢い加速して下っていく。

大きく左に回ったその先に、最後のターンが反り立ち待っている。すり鉢のようなバンクの縁まで、無駄だとわかっていても、ついついマシンを運んでしまう。そして縁から駆け下り、長いテーブルトップに挑めば、遠くにBongoと第1コーナーが現れる。一回りを終えて先に手を挙げるのは、今日はryoの役目だった。

<つづく>