雨のあわいに 6(完)

雨にやられてばかりの週末にうんざりしても、ひとたび乗ってしまえば、それは風のように消えてしまう。ささやかな晴れ間が覗く空の下、笑顔で昼をつつき始めるパドック。YZの彼だけが、担架に寝たまま。ただその彼も、倒れるまでは楽しく走っていたはずだ。ひさしぶりの再会と楽しい時間の共有。短くも激しい雨と雨の間(あわい)は、それでも土の感触を思い出すには十分で、フェンダーの裏側にこびりついた泥を掻き落としながら、心は満たされていた。

昼休みが終わる頃になって、陽は遮られ、また雨粒が落ちてきた。セルを回したKTM450Fだけが、YZの彼を気遣うように静かにコースへと走っていく。

ori-chanは午前中で上がり、雨を見上げるkyo-chanも、体じゃなくてマシンの傷みに浮かない顔つきだ。そして、もたもたしている私の耳には、コースで吠える4ストロークサウンドを切るようにして、サイレンの音が聞こえてきた。まるでチェッカーフラッグのように、音は揺れながら、ゆっくりと近づいてくる。それを合図にkyo-chanが、alpinestarsのバックルを外し始め、私は、脱いだジャージとブレストガードを荷室に放り込む。近づくサイレンの音を包むようにまた、雨が音を立て始めた。