ばくだん 4

カウンターにたった一つ空いていた椅子に、ようやく独りの男が通されてきた。大将と軽く言葉を交わし、白髪頭の連れとも初めてではないらしい。何か大きな声でからかわれている。どうやら地元の青年、といっても30後半ぐらいの男性は、私たちにも会釈をすると、keiの隣に深々と腰を下ろした。やっぱりなじみの顔のようで、すぐに名札の下がった琥珀の瓶が運ばれてくる。そして、「ばくだんで」と、傍らに待つ仲居さんにではなく板長に声をかけると、空のグラスに氷を満たして、その上から琥珀をゆっくり落としていった。大将に、隣の三人組に、そして最後に私とkeiにグラスを傾けてから、静かに口をつけると、喉に琥珀を流していく・・・「ばくだんだって」と、メニューを開いたkeiの姿を、その瞳に映しながら。

<つづく>