54×54の魅惑 4

<12/1の続き>

腰ではなく脇腹に傾げるマシンをレーシングスタンドに載せて、コースに延びるスロープをゆっくり振り返る。葉とも枝ともつかない細い緑がかすかにそよぎながら、朝の光を遮っている。夏の間、あれほど癒されたはずの杉木立も、今はただただ邪魔なだけ。そして、遠くでCRF250Rが音を上げて、湿った朝の気配に砂利を巻き上げていく。肩越しの薄っぺらな陽射しが、YZ125の黒いシートに斜めに線を引いてみせ、スニーカーの底で、地面がぐにゃりと崩れて揺れた。

左腕に回ったG-SHOCKの針は、9時を大きく越えたところで止まっている。その時が、4ストローク250ccの吐き出す音に震えていた。

<つづく>