気分は上々 7
<4/5の続き>
受付のあるコンテナの前、フィニッシュラインの引かれたテーブルトップに、「L1」と描かれたボードが翻った。オレンジ色のジャケット、mori-sanの右腕が、大きく大きく回される。その視線に、VFX-Wのバイザーを小さく上下させて、背中で音を聞く。聞こえてくる排気音も、ひときわ大きくなった。
コーナーのインとインとをつないだ最短距離から外れて、CRFがホームストレートに大きなS字を描いて走る。歴戦の使い手は、たとえ練習であっても、そんな遠回りは走らない。バンクの頂点を得意げに切り返す足下で、右腕をきれいに折り畳むようにしてもう一つCRFが、第1コーナーをえぐっていく。
「追い上げられて、自分を見失ってはいけない」
バンクを蹴って下りながら、ひとつ大きく息を吐き出し、3速、4速とシフトペダルを掻き上げる。開きっぱなしのスロットルにシフトドラムがうまく噛み合わず、4速になり損ねた4ストローク150ccがまた、けたたましくオーバーレヴする。その爆ぜる音をまとい408コーナーを抜けるゴーグルレンズの端、映る師匠のCRFをわざと見ないようにした。
<つづく>