夏日のデュオ

幼い教え子を引き連れて、背中の#148が土煙に飲まれていく。

カレの駆るホンダに、真っ赤なモトクロスウェアがよく合っている。真後ろには緑色の2ストロークが迫り、大きく弧を描いて、そのラインをなぞっていく。スモールホイールの巻き上げる浮き砂が、西へと傾いた太陽に照らされて、バンクの縁はどこかへ消えてなくなってしまった。迫るはずの右コーナーがどこから始まるのかさえ、もうわからない。

ステップに立ち上がったまま、YZ125のフロントブレーキレバーをゆっくりと締め上げ、煙ったゴーグルレンズで瞬きをすると・・・ノーズダイブしたフロントフォークに視界が激しく弾んで、バンクの縁が薄く浮かび上がった。2台から遅れてようやく晴れた暗がりに佇む影ひとつ。杉の木立で2台を追いかけるスマホのレンズと、不意に目が合った。

<つづく>