六月ものうい火曜日

空が無くなった。

昨日までの、あのカラリとした風は凪いで、濃く湿った空気に、街並みも静かなままで居る。雪崩を打つかのように沿線の緑もべったりと軌道に垂れ下がったまま、揺れもしないで居る。

発車を告げるアナウンスは、どこか重たげにくぐもって、レールにこすれる車輪も、短く音を上げるだけで、耳障りな金属音を引きずってはいかない。煉瓦づくりの駅舎が、夏日に照らされることなく、深い褐色に沈みながらのんびり近づいてくる。

不規則に並び立つ高層ビル。空がねずみ色のカンヴァスに、その端を描いていく。改札を抜けて急ぐ体の内側に、熱がこもったまま逃げないで居る。色のない物憂い季節が、明日、ここにもやってくる。