頑張れ、高校生!

四則計算と一次方程式と。

分数のわり算で分子と分母をひっくり返すくらいの、そんなわずかばかりの記憶しか残っていない。まだ鍛えようのあった脳みそで必死に覚えた公式の数々も、いざ問題が配られると、どれになにを使えばいいのかわからずだったことが、大学ノートに落とした視線の向こうに浮かんでくる。

ドアにもたれた制服姿は、小さな文字で記された数式を目で追いかけ続けている。きっと二度とはお目にかかれないはずのその公式で、解けるものはいったい何だったのだろう。赤い四角で囲まれた中に、今では何のことか思い出せもしない「Σ」の文字が、太く大きく記されていた。

頑張れよ、高校生!中学生の自分が声をかけた。