九月もあと三日

濃く霧が立ちこめて、東の空に月のような太陽がぼんやりと浮かんでいる。夜気は壊されることもなく漂い、昨日の肌寒さを身体が思い出す。

少し遅れてやってきた各駅停車に腰を下ろし、文庫のページをいくらか繰っていると、やがてエッジの利いた光が車窓から差し込み始め、前に座るOLの髪を茶色に光らせていた。数日ぶりに見る青の欠片。貴重な晴れ間はひと駅ごとにふくらみ、流れる街並みが澄んでいく。そして、いくつか川を渡り、高層ビルが建ち並ぶ頃になるともう、空は染みひとつない青に満ちていた。

秋晴れの朝、九月もあと三日だ。