光と赤いセロハンと

夜明け前、薄く濡れた歩道の上に、光が注ぎ出す。

予報は一日中、雲の中にあるはずの金曜日。走る車窓からは光が斜めに差し込んで、左の耳たぶだけが熱を帯びてくる。目の前に座る女子高校生は、陰をまとい、押し当てた赤いセロハンを懸命にすべらせ、わずかに唇を動かし続けている。膝の肌色に、光が写っては消えてを繰り返す。

そのまぶしさに思わず視線を外して、流れる街並みに焦点を合わせた。彼方の西の空は灰色に沈んだまま、天空のやさしげな水色に、どころどころ雲が白く帯を引いている。一駅ごとに増してくる光の束を背中に、列車が中目黒へとひた走る。

これなら明日は走れそうだ。

そんな思いを巡らせているうちに、女子校のある駅で扉が開いた。席を立つ彼女と入れ替わるようにして、違う制服に身を包んだ高校生が乗り込んできた。その娘の手にもまた、厚い参考書と一緒に赤いセロハンが握られてくる。うまくいけばいい、細い指先を見つめて、そうつぶやいた。