雨のやみ間に 6(完)

<11/10の続き>

朝鮮半島から引き返してくる台風。そいつが近づいてくる前に・・・勢いラフになるスロットルが、寄せるバンクのたびにマシンを暴れさせる。

山肌を削り取っただけの粗い造りのバンク。それを右に折り返し、バンクの広さのままに下りていく。前の周回では並走した二台が、今は立ち上がりでラインを交差させる。下で待ち受ける左カーブにも、贅沢にバンクが付けられていて、その斜面を借りて鋭く加速、正面のスロープから跳び上がる。高く舞う二台が、今度は固く締まった土の上に落とされる。ここを跳びきるには、もっと割り切った加速と引かないココロが必要だ。ともにフルボトムさせた車体を抱えて、二人、木々の中へと消えていく。

飛び乗った高みから大きな段差を二つで下まで飛び降りると、たっぷりと水気の残った左コーナーがテーブルトップに続いて・・・これが最後のコーナーになる。

先の見えない斜面を駆け上がると、またもマシンは高く飛ばされるばかり。ランディングまで届かずにワンバウンドから、体を入れ直す間もなく、次のテーブルトップの斜面にフロントタイヤが上を向く。そしてまた放り上げられる。何とか形になるのは、最後の一つだけ。そのフィニッシュジャンプを先に跳び越えたのは、CRF150RⅡだった。片方の肩に爆弾を抱えたまま、ブレストガードを外にして纏うその背中が少し右に傾げて、マシンもつられて軽く右を向いた。

パドックに抜ける切り通しが、そこだけ明るく華やいでいる。

一年ぶりに二人だけで過ごす時間の後ろから、CR125のカン高い排気音が迫り、加速しながらフィニッシュに並べられた三つのテーブルトップをきれいに跳び越えていく。ゴーグルのブルーレンズに弾けてた雨粒が少し大きくなって、雲間にのぞいた淡い水色もいつしか見えなくなっていた。