BRONX BOY 2

<11/20の続き>

9月5日 AM

澄んだ水色に、ちぎれた雨雲が鈍色に流れて、西から空がのびていく。並び翔つ二つの黒い影。アスファルトを撫でる四本のタイヤ。雨に滲んだ歩道に、虫の音がそよぐ。風の薄い、静けさの残る朝。日常がまばらに戻ってきて・・・・・・昨夜のTVニュースが作り物の気がした。

しっとりとしたレールをすべるようにして、いつもの電車がいつもの時間にやってくる。開いたドアから乗り込む人波にも、いつもの顔が散らばっている。そんな湿った朝から始まった一日は、黙ってパソコンに向かっているうちに、夏の真昼になっていた。

外でする昼飯をあきらめて、ずうっとキーボードを叩き続けていたら・・・・・・日が暮れるずうっと前に、今日の仕事がすっかり片付いていた。時間は午後5時30分。ここからなら急いで帰り支度をすれば、6時までに六本木の街に十分たどり着ける。この日の現場を本郷にできたのも、思えば巡り合わせだったのかもしれない。

<つづく>