BRONX BOY 3

<12/1の続き>

エスカレーターで最上階のホームまで上がって、ふと流した視線の先。フリーペーパーの積まれたラックに目が止まった。濃い褐色のレンズに隠れた瞳、口ひげ。腕を組んで首を傾げる姿にレスポール片手に佇むフォルムが透けて見えたのは引力か。見慣れた銀色のコスチュームを確認するまもなく、やってきた赤いストライプの車両に飛び乗る。

そして座席に腰を下ろし、ゆっくりと表紙を眺めてようやく気がついた・・・・・・。

ビルボード東京」のフリーペーパーを手にしたあの日から、ちょうど1週間が過ぎた水曜日。引力に引き寄せられるまま地下鉄の六本木駅、行き場のない湿った風がまどろむプラットホームに降り立った。薄暗いコンコースをジグザグにたどって、エスカレーターに乗って地上に出て、陽射しを明々と映した東京ミッドタウンに飲み込まれてまた、エスカレーターで階を重ねていく。

<つづく>