BRONX BOY 4

暖色に包まれた4Fのフロアが、KISS ARMYに溢れている。東京ドームで出会ったレプリカも当たり前のようにそこに居て、ぐるりとスマホのレンズに囲まれている。オリジナルに負けず劣らず彼も、ここでは大した人気者だ。CAエリアのチケットと引き替えにカウンターバーでジントニックを受け取り、狭い階段を5Fへと上っていく。透明のプラスチックカップは、100円でいくつも買える代物。口を付けると、甘さだけが残り、アルコールはすっかり氷に負けている。それでも冷たさは体の中を落ちていき、正面のガラス越し、醒めた瞳に六本木の光が映り始めた。

宵に闇が満ちて、ガラスに光る街の灯りを幕が遮る。見下ろす3Fのステージ、その中央だけに青白い照明が落とされている。誰もが食事の手を止め、グラスから指を話すと、聞き覚えのある透きとおったアルペジオが、薄く這う白煙に乗って静かに流れ出した。その物憂げな旋律に合わせるでもなく、フロアの陰から大きなストライドでやってきたのは・・・・・・BRONX BOY。口ひげにサングラスはそのまま、銀色のコスチュームの代わりにSPACE MANのイラストがプリントされたTシャツを被り、Gibsonのオリジナル、タバコサンバーストのレスポールへと近づいていく。

<つづく>