「大丈夫?」
左のわき腹をさすりながら後ろを振り返ると、青いフロントフェンダー越しに細めた瞳が曇り、静かにこちらをうかがっていた。
曇天の昼下がり、ヒート2。スタート直後の第1コーナー。インベタを狙った二人が揃ってエンスト車に前を塞がれて・・・・・・完全に出遅れた。それでも先頭を走る集団は団子のまま、三つ先のコーナーを立ち上がり、レースは始まったばかり。転倒車にかまうことなく、倒れたマシンに乗り上げて前を行ったとしても、誰も文句は言わない。たとえそれが、仲間のマシンであってもだ。
でも、YZ85LWのカレは・・・・・・それをしなかった。
<つづく>