懐古 5

L-1のボードを後ろに回したmori-sanが、大きく左の腕を振り上げて、ゴールラインをまたいだRMを送り出す。あと2周・・・・・・ここまで仕掛けてこなかったのに・・・・・・はっきりと耳に届いていたはずの排気音が、気づけば消えている。今度はカレが、仕掛ける前にしくじった。

振り返っても、そこにあるはずの青い車影は見つからない。大きく上半身を開いてもう一度見返すと、フープスの入口でマシンが1台、エンジンを止めている。レースが終わりに近づいているのは二人ともわかっていた。だから、仕掛けるのに焦ったか・・・・・・。ホームストレートへとすべっていくテーブルトップで止まるような速度まで落とし、ただ後ろから聞こえてくる音を待って、なだらかに斜面を降りていく。

だらだらと第1コーナーに迫るRM。その後ろに、重たい土を蹴り上げ待ち人がやってきた。序盤のクラッシュで待たせたから、これでおあいこ。最後の2周が本当の勝負になり、これでもう、インを空けられなくなった。

こんなわがままな時間を、笑って作ってくれるHERO'S。ここには素敵な仲間が、まだ居てくれる。ryoと、そしてちょっとヒネたアイツを、#357をまとうCRF150RⅡに乗るアイツを覚えていてくれる仲間が・・・・・・。

<つづく>