ついてない

いつもこうだ。

大きくうなずき気持ちを入れて、始業時間に間に合うように乗り込んだはず電車は、途中の駅で完全に止まってしまった。この先、終着駅付近での設備停電が、その理由。「運転見合わせ」と、気が遠くなるほどの「運転再開見込み時間」。そして、振り替え輸送の案内が、繰り返しホームのスピーカーから流れ続けている。他の路線が乗り入れてもいない、来た道を戻るしかない単線軌道の上、旧式の客車が、シートを低く揺さぶりながら、耳障りに空調の音を吐き出している。

鈍色の空が窓の外、薄く晴れてきて、風に動いていく。ガラスから射す光が、窓際でじっと動かないでいる輪郭を床に落とし、聞こえるのは無邪気な女子高校生の笑い声。向かい側に来るはずの上り電車は、相変わらず駅員の案内だけで、まったく姿を現さない。その間に陽射しはどんどん強くなって、いらついたように濃い影が右手でスマホの画面を叩き続ける。ついているのかいないのか?いつか聴いたフレーズに思いを巡らせているうちに、手元のガジェットの電源が落ちた。

のんびりを決め込んだ停車車両から追い出され、遅れてやってきた上り電車にまた揺られて・・・・・・朝、駆け足で抜けた改札まで帰ってきたら、空はくすんで、いつしか雨の気配に戻っていた。ここのところ、いつもこうだ。気持ちだけが、空回る。