この日僕は

途切れてしまった糸を繋ぐことはもう、できなかった。

「ラスト1周」のボードをくぐり抜けて、ホームストレートエンド。第1コーナーを苦手なインサイドに寄せ付けて、右へと折り返す。直前に撒かれた散水の痕が立ち上がる直線へと孤を描き、うっかり右手を開けば、たちまちマシンがスリップダウン、そこでレースが間違いなく終わる。たどたどしく、いったいいつまで時間をかけているのかと、自分でもあきれるくらいにゆっくりと回るRM85L。そして、いつもならその黄色い車体が翻るはずの、目の前のアウトラインを、青い2サイクルがまっすぐに駆け上がっていった。

後ろに迫っていたkojimaさんのYZ85LWは、立ち上がりの勢いをそのままストレートに乗せていって、そこまでの順位があっけなく入れ替わる。バンクに白く「MX408」と描かれた第2コーナーへ、被さるように飲み込まれていく2つの車影。大きな左巻きの円弧の先で、前を走るYZのリヤタイヤが大きく右に流れた。なのに、「しめた!」と開いたはずの右手は、もう全開に絞られていて、まったく手前に動かない。左に揺り戻される車体が均整を取り戻すと、わずかに早くYZが、再び鋭く加速を始めた。

離れていく背中は、まだ遠くない・・・・・・それなのに僕は、まだ9つもコーナーがあるというのに僕は、その瞬間にレースを諦めてしまった・・・・・・。三番手を走るCRF150RⅡに迫れなかったことがすべてだったのかもしれない。オープニングラップから、その背中を見せられ続けて、少しも近づかないその背中の148に、くじけたのは間違いなく僕だ。ひとたび崩れた気持ちは、あっという間に崩れ落ちる。短いレース時間の中で立て直すのは、それほど簡単じゃない。このレースで得たものがあるとすれば・・・・・・そんなひ弱な僕に再び会えたことだけ。

この日僕は・・・・・・途切れてしまった糸を繋ぐことができなかった。