初夏の候

雲が消えてなくなり、淡い青の空からは、見えない光が強く降り下りて、濃い影を残していく。「紫外線に気をつけなければいけない」と、見覚えのある天気予報士が真顔で伝えるその横で、アシスタントの女の子が、「洗濯物はよく乾きます、2回できます」と笑うように話していた。おぼろげだった春の日から一夜が明けて、街はまた、夏の光を纏うらしい。都心に向かう列車はもう、頭の上に冷気を吐き出している。深い海老色の軌道は、その頂点だけが鉄輪に磨かれて、そこに落ちた陽は車窓の外でまっすぐにいつまでも並んで走ってゆく。太陽がくいと高く上って街の陰影を描き、ビルの窓を覆う看板はハレーションを起こして、往く人の影が小さくなる。やっぱり今日は暑くなりそうだ。