「相棒」

「ジクサーの250がもう少し華奢だったら・・・・・・コイツを選んだことをきっと後悔したに違いない」。年代物のラパイドのなかでうそぶきながら、速度計の針が真上を越していかないように、右手を落ち着かせて走る。

SOHC2バルブ、空冷の旧式な4ストロークに今時のFIの組み合わせは、キャブレターよりも少しだけ敏感に反応してみせる。中指ほどの排気口から吐き出されるのは、周りに遠慮したような小さな連続音。その軽やかな旋律に、あてもなく右手をあおり、左足がシフトペダルを掻き上げる。

1km/hごとに目盛りが引かれたアナログの速度計。フロントのハブに共締めされたメーターギヤからケーブルがトップブリッジまで延びて、その上で黄色い針が震えている。風が眩しい陽光を置き去りにして、GROMの倍になる排気量は、そのまま幹線国道を走る気にさせてくれる。

四輪の列に紛れて、オレンジ色のホイールを回したヤマハが駆けていく。陽は西に大きく傾き、アスファルトに車影が長く映る。オドメーターがゆっくりと100.0に回って、エンジンにアタリも出てきた。次はもう少し遠くへ。そう思わせてくれる「相棒」、この軽二輪とは長く付き合えそうだ。