回帰

褐色の水しぶきがゴーグルレンズに弾ける。水に隠れた傾斜にリアタイヤが左にズレて・・・・・・一瞬気持ちが抜けかかっても、すぐに右手がスロットルケーブルを引き絞る。そして、フロントタイヤが土から離れて、二つ目の水たまりは、ブーツを濡らさずに加速する。

レインウェアを着るどころか、持って走り出すことさえしなくなっていた。モトクロスでも同じこと。雨が降っても水しぶきを上げて走り、ウェアが濡れるのも気にならなかった、あの日。それがいつの頃からか・・・・・・濡れたり汚れたりするのを避けるようになった。

雨上がり。河川敷らしい滑り出しと、水たまりに浮かぶ太陽が、懐かしい感覚を思い出させる。ひさしぶりにヘルメットの中で嬌声を上げ、走り続けるCRF15ORⅡ。無くしていた何かを、少しだけ、取り戻せたような気がする。アイツもきっと満足している。