野田線

さいたま新都市の次は大宮。ここで私鉄へと乗り換える。JRは貪欲に延伸を進めるだけ進めて、今では群馬の高崎や、栃木の宇都宮から、一気に横浜を通り越して、小田原や熱海にまでたどり着ける時代になった。便利になった反面、ところどころで電車は立ち往生、延伸が過ぎたおかげで、帳尻を合わせられなくなってきている。今日もそんな軽い電事故につき合わされて・・・・・・横浜からの帰りは、そうした事故に出くわすことの少ない路線を選んだ。

にぎやかなコンコースを、人並みに紛れながら急ぎ足で歩き、発車寸前の先頭に近い車両へと乗り込む。わずかな隙間を見つけて腰を落とし、途中だった文庫の続きを開く。立つ影はまばら、動き始めた車両の後ろには、落日が浮かび上がる。それは車体といわず、辺りをオレンジに染めあげて、一駅ごとに、その色を濃くしていく。気づけば、それまで高いビルに遮られていた空が、車窓に広がっていた。春日部に着く頃には、空の端が紫に染まりだして、もう宵の口が迫る。

今では「アーバンパークライン」と小洒落た名前を付けられているけれど・・・・・・やはり東武野田線の方がしっくりする。南桜井の駅を降りて見上げた空にはもう、月がうっすらと姿を現していた。