これがホントの走り初め 5

師匠の“お供”愛犬クッキーの頭をひと撫でしてから、“ご主人さま”を探しにCRFに跨る。反発力の強いキックペダルを何度か踏み下ろして、ようやくエンジンが低く騒がしい音を上げる。クラッチレバーを離した瞬間、リヤタイヤが爆ぜるような出足はCRFだけのもの・・・RMには無い感覚だ。スターティンググリッドの前、数台がたむろしている真ん中でエンジンを暖めていると、スネークヒルを下りてくる師匠の姿が目に入ってきた。

下りきった先のコブを三つ、ゆっくりとスタンディングで“いなし”、フィニッシュテーブルも跳び上がらず・・・一瞬視界から消えたCRFが、ホームストレートへ折り返す左コーナーの先、邪魔なテーブルトップの先から姿を見せる。視線に気づくと、マシンを加速させずにそのまま右へ大きく蛇行、ワタシの真横に着けてエンジンを切る。「上っ面が湿ってるぐらいだと思ってた」意外にも“ベスト”じゃない路面に、師匠もげんなりしていた。

しばらく二人で路面の状態を嘆いていると、CRF250Rが一台、こちらに一瞥をくれて、ホームストレートを駆け抜けていった・・・#41、kusaba車だ。か細い体に似つかわなく見えていた組み合わせは、今ではすっかり様になって、猛々しい排気音を残して第一コーナーへ見えなくなった。その姿を見送ると、どちらからともなくキックペダルに手が延びて、エンジンを再始動・・・お互いに目配せをしてから、ワタシが先に第一コーナーへと加速を始める。 まずは“ウサギ”だ。

<つづく>