Separate Ways 2

Van HalenのYou Really Got Meを、少し音量を上げて口ずさむ。荒削りな音質のリフに合わせて肩から上を前後に軽く揺らしながら、受付に置かれた木製テーブルのすぐ脇にBongoを横付けする。下がり始めた運転席の窓から、デビット・リー・ロスのしゃがれたボーカルがあふれ出る。「どうしたの、そんなに気合い入れちゃって」saitoさんが、しばらくぶりの雨のない休日に微笑んでいた。いつもなら「今日は、一人?」と聞くはずのsaitoさんが何も言わないのは、事情を知っているから・・・二人してうつむきそうになるのを見透かしたように、すかさず「だいぶ乾いたけど・・・まだね・・・」と、悪戯っぽく視線を後ろのコースに向ける。「まだだめ?」と聞き返すと、「コーナーは良いんだけどね・・・ストレートが」まだ緩いらしい。“直線番長”には、とても残念な路面のようだ。見ればテーブル周りを城北Rの顔が囲んでいて、一番手前にuchinoさんが座っていた・・・その笑顔は、うれしそうに弾けている。走行申込書を書いている間にも、Bongoのフロントガラスに顔見知りが映っては、こちらに手を振って通り過ぎていく・・・MCウィークらしく、ミニモトの大人たちが集まっている。目の前に残った水たまりにくじけること無く、新しい“魔法の券”を仕入れて、パドックへと入っていく。ゆっくりと進むBongoのタイヤが、土に溜まった水気を押しやり、やわらかくベチャッとした音が、運転席の耳元まで届いていた。

<つづく>