願わくは 6

RMのハンドルを握りなおして、ステップには立ち上がったまま、一度左に傾けた車体をすぐに右側へと寄せていく。コーナーの広さが目に入らないほど、たったひとつの線が砂に刻まれ、斜めに横切っている。小さなS字は、外に向かってなだらかに落ちていく・・・いわゆる逆バンク。アスファルトの上ではなかなかお目にかかれない、意地の悪い造形だ。ライダーの期待とは真逆の傾斜角が、RMを一度止めるような速度にまで落とし、操る体を固くさせる。昔、第1コーナーを抜けて、短い坂の上、幅のある第2コーナーが「アリ地獄」とか「奈落」とか言われていたことを思い出す。あのときも・・・IAクラスのライダー以外は、転倒する者しか外を走っていなかったような気がする。ずいぶん小さくまとまってしまったけど、雰囲気はあのときの第2コーナーそのものだ。右と左も違うけど、エンジンを、タイヤの回転を止めないように、そして、あわてて横すべりさせないように・・・しなやかさを失った上半身が、中途半端にハンドルを押さえつけながら、コーナーの後に続く斜面を目指す。

<つづく>