土曜日の朝

ベッドから起き上るまで、ずっと寝ているはずの土曜日・・・だったのに、7時を過ぎた頃から、2階で寝返りを打つたび、甘えた声が耳に障り始める。シロとネロの声だ。玄関から階段を上がり、寝室の扉をすり抜け、半身に転がった肢体を伝い、耳に届く。右に左に体をひねり、そのたびに目が覚めて・・・何とか1時間、繰り返したけど、もうダメだ。携帯のロックを外して、右手の中の液晶を見ると8時24分。ベッドから下ろした足が、フローリングの床をきしませ、その音を合図に、階下でゲージを揺さぶる鳴き声が駆け上がってきた。昨夜「おやすみ」を言ってから8時間・・・まだ半日も経っていない。それなのに、玄関に立つ姿に向かって吠える、吠える。まるでずっと逢えずにいたことを責めるように・・・これが恋人なら我慢もできるだろうけど、それは夢でしかない。買ったばかりのゲージを壊されないように、まずはシロをなだめる。ゲージのすき間から差し込んだ指先に鼻をつけてから、舌を出してペロペロよく舐める。それを見ていたネロが、じれったく、上のゲージで身をよじる。ワタシの指を舐めるよりも、ジブンの体をつつかれるのが好きなネロ・・・ゲージに押しつけられてはみ出た、白と茶糸のまだらを人差し指で突いてやると・・・鼻を少し上にあげて目がうつろになる。気持ちがいいみたいだ。ひとしきり玄関で過ごしてからリビングの遮光カーテンを開け放つと、曇りの予報は大きく外れて、明るい陽射しがコンクリートを白く光らせていた。これが明日だったら・・・そう思わずにはいられない、よく晴れた朝だった。