ただいま! 3

ブレーキが間に合わず、背の低いアウトバンクまでフラフラとはらんでいって、そこから強引に、KXのフロントタイヤを180°左に向ける。コースでいちばんせせこましいS字を抜けて、跳べないテーブルトップの裏側にフープスが待っている。ココも、ひとつひとつのコブが固まっているのは良いけど・・・右に行っても左に離れても、どちらも入り口のコブがふぞろい。とくに右、イン側のラインは、フロントタイヤを押し当てるように加速していくと、右か左に車体が弾かれて、カラダが強ばる。どこを走れば良いのかわからないまま、ただただ8つのコブにマシンをぶつけては、疲れ果ててバックストレートへ抜けていく。大きく左に曲がる路面はゆるんでいて、いつもはすべり出すリヤタイヤと相談しながらひねる右手も、思いきりよく開けていける。日陰のココは、今が旬。もっと寒くなると、凍りついてしまう路面も、今日はリヤタイヤにまとわりついてくる。イン側、少し陽の当たるところでも、カチパンのように砂が浮いた感じはしない。ちょっと右に流れては、すぐに車体が手元に戻ってくる。続くギャップに変な角度で入らなければ、そこからは直線がただ延びているだけだ。左の人さし指と中指が軽くクラッチレバーに引っかかると、けたたましい音を上げて、KXが加速し始めた。

<つづく>