初夏の軽井沢 9

<6/5の続き>

少し右に傾げた斜面は、きれいに反り返り、付け根が深く鋭くえぐられている。ストレートの勢いをそのままぶつけると、外の林の中に跳び落ちてしまいそうなくらい。ヒジを折り腕を引いて、リヤタイヤを左に流しながら“抜いて”・・・しなやかに跳び越えるのが正解なんだろうけれど、あいにくそんな腕は持ち合わせていない。控えめにブレーキを引きずっただけで、なすすべなく舞い上がるKX。かなりの高低差に、新車のときのままのサスペンションがきつく縮みこんで、フレームがガツッと大きな音を立てる。先週、シュラウドを挟んでいたヒザを開いたまま着地して、ひねったことを思い出す。ここから、次に大きなキャメルジャンプが見えてくるまで、パドックが消えてなくなる。落差を受け止めてすぐ、もうひとつ今度は小さな段差を跳び下りる。ステップダウン――しかも「先が見えているから」と安心して跳びだすと、傾斜はまだ下り、落差の勢いも残っていて・・・着地で思いがけず、深くカラダが屈みこむ。着地してゆるく右に曲がりながら、さらに右のヘアピンまで、まだ下っていく。緑につつまれた短い直線が次の右カーブを回りきるまで、土が褐色を帯びて、ようやく山の中を走っている気にさせてくれる。きめ細かな山砂が、その右コーナーの真ん中に吹き溜まり・・・突っ込んでいくと、勢いを失うかわりに、やわらかな感触がシートやハンドルからカラダ全体に広がった。

<つづく>