あと5cm。 5(完)

<6/17の続き>

1つ周るごとに、コーナーが素早く近づく。そして、フロントとリヤと、ちぐはぐなブレーキに戸惑いながらも車体を翻しては、乾いた山砂にラインを刻んでいく。けして新しいマシンではないのに、周回を重ねるたびに気持ちが昂ぶり、2、3周借りて返すつもりが、結局チェッカーを受けるまで走りきってしまった。

パドックに戻り、無造作に下ろした左足が、砂利を外して空を切る。ぐらりと左に傾げた車体のおかげで、ようやく左の足の裏が小石をつかみ、右足がステップから離れた。そこからキックペダルを引き出して、右の足の裏をかけようとしても、左のヒザをかばっていては、まったく届く気がしない。

あと、5cm。そう、それだけ脚が長かったら・・・もっと面白かったんじゃないかと、今、そう思う。2ストローク125ccマシン、手は届くのに。