そして、今日も。

西の空の高いところに、うっすらと月が漂っている。宵からの温い空気は太陽に照らされて、緑の葉先の小さな露がヒカリをまばゆく跳ね返す。少し寝坊した朝は、すっかり明るく乾いていた。駆け足で散歩から戻ると、急いでYシャツに袖を通す。この程度のロスなら、十分間に合う。ネクタイにもジャケットにも手を出さず、夏と同じ格好にまま、玄関の扉を勢い開いて出ていく。

小一時間ほどクルマを走らせ、始業直前に職場の駐車場へと降り立つ。そこから見上げる空は青が冴えて、西の月はその影さえ見つけられなくなっていた。道端の秋桜が、強い陽射しの中、風にそよいでいる。今日も暑くなりそうだ。