不馴れな 2

キャリパーが薄いステンレスのディスクを挟み込み、沈んだフロントフォークがタイヤを路面に押しつける。逃げ出すことなく、バックストレートの勢いを受け止め、ぐぐっと殺していく。問題なのはその先だ。乾ききったカーブに、吹き溜まったさら砂。右手に過敏なエンジン、そして邪な色気。ゆるく傾き始めたRM、その倒し続けているうちから、我慢できずにスロットルを開き、左の人差し指がレバーにかかる。

いつもの悪い癖に、薄い混合気がエンジン回転を一気に跳ね上げ、リヤタイヤがグリップと駆動の均整を失い、大きく左に流れる。反射的にステップから離れた右足が、路面をすべるように蹴り上げると、マシンのバンクは止まり、荒れた杉の木立の下をけたたましく駆け上がる。アウト側の一本杉、その幹に巻き付けられた薄っぺらな警告シートに思わず目を奪われながら、もう一度マシンを寝かし込み、コブで小さく跳び上がる。

<つづく>