まもなく

舳先を苫小牧に向けたまま、藍色の海を割って船が往く。邪魔するものは何も誰もない太平洋を加速も減速もせず、ただひたすらに。緑色した甲板は濡れそぼち、その上に雨の滴がいくつも小さな輪を描く。エコノミーの狭い寝床にカラダを横たえるのにも、もう飽きた。ネロの鼻声に後ろ髪引かれるのも、もうツラい。最後に三度目の風呂を浴びて、ようやく接岸が迫ってきた。眺める窓の先、雨に煙る港が見えてきた。