雪上がりに

夜の闇を払うようにしていた白い風は、いつしか止んで、静かに朝が来ていた。雪はさらさらと漂うだけになり、開いたカーテンの先の枯れ木の山が、真新しい白さに包まれ佇んでいた。空にはゆっくりと青みが差していって、稜線からこぼれた朝日が、その山肌に淡い橙の帯をくゆらせている。まばゆい光は、雪の朝によく似合っていた。

ホテルから雪道を10分。車から降りれば、昨日の駅舎の三角屋根が、雪をふっくらと積もらせていた。

ディーゼルの機関が古びた車両を右に左にゆらりゆらりと揺らしては、雪に埋もれた次の駅舎へとひた走る。にじんだ車窓にひなびた駅舎の屋根が歪んで映り、覗いていた空の青がまた、ちぎれた雪雲に霞みはじめた。他に見えるもののない白亜の世界。渓谷をいくつも渡り南へ下る列車の屋根に、大きな音を立てて雪が落ちた。