気分は上々 5

<3/21の続き>

3つ目の右コーナーをすり抜け坂を駆け上がるまでに、もう誰も見えなくなった。

前に出たとたんにそれまでの勢いが消えてなくなり、両腕は何かを守るようにぎこちなくハンドルバーを動かす。一瞬、速いのか遅いのかがわからなくなって、コーナーをたどたどしく回る4スト150ccマシンにいらついては、自分を恨めしく思うようになる。妙にちぐはぐなフープス、4つのコブを過ぎて折り返し、短く直線を加速。右に直角に折れるコーナーの入り口で、わずかにフロントタイヤが外に揺れた。

右のつま先が土を蹴り、少し傾げたCRF150RⅡが斜めのまま、続く斜面から跳び上がる。

もう一つ、小さなテーブルを跳び越すと、暗がりに坂が延びている。湿った坂の途中、馴染んだ2ストロークマシンと同じタイミングで右手を返すと、CRFは失速。そこから車体を捻って右手を開けば、右から山肌が迫り来る。明るさの中に戻っていくと、大きなテーブルトップの下から、今度はウェーブが待っている。ヒート1でズレた左膝は、キャップにかすかな痛みを残すだけで、しばらくは耐えてくれそうだった。

ここをスタンディングで走れているうちに・・・2つの車影を後ろに引き連れて真っ先に2周目に入ると、後になってそれは、「オープニングラップ賞」と名の付いた一枚の小さなチケットになった。

<つづく>