長い休みのその後で

都心に向かう地下鉄の、長い車両の真ん中に腰を下ろす。読みかけの文庫本に挟んだしおりを手にページを開く。短編の連作は直木賞を穫った作品で、ちょうど幕の切り替わるところだった。ゆっくりとページを繰り、話が進むごとに席は埋まっていき、吊革につかまる人と人の間にもう一列、人が並び始める。空調が冷房に切り替わる頃、電車は荒川を越えて、しばらく走って地下へと潜っていった。ヘッドホンから流れるKISSに鼻を鳴らし、ふと視線を上げると、白いロングプリーツが目の前に揺れていた。