雨のやみ間に 2

誰もいない受付小屋を右に見て、棚田のようなパドックらしき広場までゆっくり上に進んでいく。停まっている車は一台だけ。ただのステーションワゴンで、中にマシンを積み込んでいる雰囲気はない。山の中に迷っただけのようで、どこからコースになるのかもわからない。その坂道が突き当たり、そのまま右にハンドルを回すと・・・切り通しの先に、いきなりコースが現れた。

ギヤをリバースに入れて、来た道を下り、コンテナの横にステーションワゴンの停まる空間にBongoをすべらせ、イグニッションを落とす。梢を揺する風の音にかすかな鳥の声が混ざり、人の気配はまったくしない。目的地に間違いはないのだからとシートから降り立ち、もう一度坂を上っていく。赤土に慣れた脚がうれしそうに砂を蹴ると、靴底が砂を噛んで、こすれた音を立てる。

そして、切り通しから少し出て行ってみれば・・・足下に広々としたホームストレートが横たわり、そこに続くテーブルトップのランディングが、曇る空に向かい、褐色の斜面を高く延びて見せていた。見たことのない光景に、ryoがネロを引き連れ、ホームストレートへと降りていく。

その開けたホームストレートに、どこから来たのか軽トラックがとぼとぼと上ってきた。奥の林の中、コースの傍らで白樺の切り株を荷台に集めていたと気づくのは、まだ少し先のこと。呆気にとられる二人の目の前を、ボディを揺らしながらコースアウトしていった。

「白樺の中を走るなんて」

遠く関東から届いたコメントのままの景色と、見事なテーブルトップ。そして並んで走れる幅広の山砂。見惚れてパドックへと引き返すと、入れ替わるように、古いハードトップに乗った管理人がやってきた。濃いサングラスの陰に人なつっこい瞳を隠すようにしながら。

<つづく>