リトルレーサー 2

 キックペダルを踏み下ろせば、エンジンは掛かる。しかし、自慢の2ストロークエンジンは不機嫌で、まったく吹け上がらない。右手を思いきり手前に捻ると、くぐもった排気音を残して、息付きを起こす。そして、エンジンストール。ピットロードから描いていた青写真は、一気に真っ白くなった。経験不足からくる単純なトラブル。ブルーザーホースの泥詰まりを、このときに気づくことはできなかった。最後の一台を待つグリッドへ。祈るようにして、喘ぐ愛機を運んでいく。

つづく