ノトノウミ

陽射しに揺れる沖の背。細かく散らばった太陽の欠片。濃い灰青色の翼を広げ、波の面を這う海猫。そして、凪いだ浅瀬に漂いながら、その真っ白な腹をゆっくりと追いかけるように泳いでいく。期せずして手に入れた、のどかなプライベートビーチ。目映い水平線から振り返ると、板塀に黒瓦をのせたシルエットが、潮に濡れた瞳に映り込む。午後四時を過ぎても揚々とする夏。海猫がまた、その夏にゆらゆらと影を落として飛んでいく。