今日、ボクはキスをした。
都心のビルの中でパソコンのセットアップを終えて午後二時。遅い昼を「つけ麺」と決めた二人は、ビルを出て、JRの駅に続く鋪道を急いだ。駅とは反対側の、混み入った飲食店街へと片側三車線の国道を渡り、目指す店に歩を進める。店の扉を開けると、さすがにピークは過ぎていて、すぐに二階へ案内された。狭くて急な階段を上りきると、先客は、女子二人だけだ。すでに食べ終えている女子に目をやりつつ、スマホに表示されたアプリでぎくしゃくとオーダーを送信、魚介の濃厚なつけ汁で、もちっとした中太麺を平らげた二人は、次のオンライン会議に向け、これも急いで席を立つ。そして、カノジョが前屈みにバッグを取り上げようとしたその時、カノジョの肩に触れて引き寄せ・・・・・・その唇に、口唇を重ねた。
驚いて見開いた瞳の、すぐにやわらかく閉じてしまう前に、そっと体を離すと・・・・・・格子窓から秋の陽が延びてきて、カノジョの頬をうっすらと染めていた。