2014-01-01から1年間の記事一覧

Ready to Race!? 4

<9/25の続き> まぶしさの中、談笑している相手はざりまま。左の手首に絡んだリードの先で、大きな黒が飛び跳ねている。その輪郭は、遠くからでもよくわかる。iguchi師匠と、愛犬のクッキーだ。大きなカラダの後ろで、連れ立ってきた嫁さんの姿が出たり入っ…

H2R 前編

聞けば、真っ先にKawasakiが思い浮かぶ。そして、2ストロークマシン750SSの山吹色したガソリンタンクと、3本マフラーの吐き出す排気音が記憶の中で像を結ぶ。もう何年もモトクロスを続けているのに、モトクロッサーを引っくるめたバイクというものに、ほとん…

十五夜

浅草六区に建つドンキホーテ。歌トモの待つその6Fに向かい、すみだリバーサイドホールの足下を小走りで抜けていく。予定よりも30分早く届いたメールには、「着きました」と一言だけ。体調を気遣って30分遅らせたはずの集合時間は、結局元どおりになった。隅…

十三夜

月明かりが広がって、深い藍色の夜空に白い霞がかかる。星の瞬きも、碧い光に影を失くしている。雨と風が汚れを溶かして流し、澄んだ宵の空には、雲が西から東へ帯のように円く渡る。そして、月が潜れば、真っ白に透きとおり、ところどころ薄くひび割れてい…

Walter Wolf 4(完)

<10/1の続き> そんな500ΓWWのオリジナル、2年落ちのレーサーRG-Γ500 Walter Wolfを駆り、サーキットで挑み続けていた男の記憶が、それから15ページ続いている。“東海の暴れん坊”、水谷勝その人だ。“汚れた英雄”を追い立てる狼の姿は、「声を上げずにはいら…

Walter Wolf 3

<9/27の続き> 京成線のお花茶屋駅近くにある営業所から国道6号線を突っ切って、立石の先で都道318号線、通称「環状七号線」に出る。先に交差点を右に翻ったのは、yabeちゃんの乗る初期型RG250Γ。角張った“奴凧テール”にやわらかな腰の線がよくなじんでいる…

秋晴れ!

夕べから差しておいた充電器の端子を外して、dukeをガレージから外へ出す。特徴的な橙色が、光の中、よく映える。KX85-Ⅱで福島の山の中を走っていたはずなのに、ちょっとした手違いで行けなくなってしまった。昨日の空なら、それでもまだ我慢できたけど・・…

Walter Wolf 2

RZV500にRG500Γ。公道を走るその2ストロークは、排気量が500cc。車名にyamahaとsuzukiの性格の違いが出ているけれど、当時の“レーサーレプリカ”を地で行く2台は、限定解除の高い壁もあって、遠く憧れるだけの存在だった。それが縁あって社会人2年目の春、そ…

Walter Wolf

今思えば、ずいぶん好い時代に若かった。 フルフェイスのaraiは、濃い藍色の下地に真っ赤な線が斜めに走り、その上と下を金色が縁取っている。開いたシールドの奥、左よりも右が細くなった瞳が、まっすぐこちらを見つめている。その眼光は鋭く、“暴れん坊”の…

Ready to Race!? 3

先週の日曜日と代わり映えのない、ゆるんで荒れた褐色。その上に、生々しいワダチが何本も刻まれている。夜半に川越周辺を襲ったゲリラ豪雨が、青い空の下、オフロードヴィレッジにもいくつか大きな水たまりを残していた。 スタートしてすぐの第1コーナー。…

Ready to Race!? 2

<9/7の続き> フィニッシュラインの先、赤いパイロンひとつとビニールテープだけで、ホームストレートの端にできた折り返し。フロントとリヤのブレーキを強めにかけてから、少し左に開くように立ち上がると、第1コーナーとそこからつながったテーブルトップ…

焼け付く寸前、ギリギリのところで 3(完)

それも度が過ぎると、ただただブン回るばかりで、まったくチカラの出ないエンジンに仕上がってしまう。空吹かしすると、厚みのない軽い音が空へと抜けていき、タコメーターの針をビュンビュンと動かしてみせる。ただ、平らな道では苦もなく吹け上がるくせに…

焼け付く寸前、ギリギリのところで 2

カムシャフトやらバルブやら、余計なものをまったく持たない2ストロークエンジンは、回転の上昇がやたら速い。胸をすくような、時に恐怖さえ覚えるこの感覚は、いつしかカラダに染みついて病みつきになる。あちらこちらに2ストジャンキーが生まれるのも仕方…

焼け付く寸前、ギリギリのところで

コンコースへと延び上がる階段、その1段目に右足を載せて、体重がその足の裏にかかるように左足を持ち上げる。“く”の字に曲がった左脚の先が2段目に下りると、右にあった重心は左へと位置をずらし始める。今度は右脚を折り曲げるように3段目へ運ぼうとした瞬…

Riding high! 6(完)

nagasimaパパが、後ろに2台のマシンを引き連れて第3コーナーを立ち上がっていく――。 しばらくぶりに粗雑な走りを叱られたかったのに、最後の周回では、その差が少し離れてしまって・・・YZR500を駆る彼のように、うまくはいかなかった。一度グズると、なかな…

Riding high! 5

MX408のフープスの上でさえ、クラッチレバーに指はかかったまま。少しでも加速が鈍れば、すぐにレバーを引いて半クラッチを当てる悪癖だけど、役に立つこともある――全開で吹けあがっていたエンジンが、無意識に握り締めたクラッチレバーの上に、2スト85ccの…

Riding high! 4

<8/18の続き> 打ちつけられるヘルメットを守ろうとして、反射的にすくめたアタマが勢い余って、左に転がり出た。アゴを引いて第1コーナーに向けていた視線を、もう一度フロントタイヤのすぐ先に落す。褐色の上に転がったヘルメットは目の前――もう間に合わ…

Ready to Race!?

ガラス窓を叩く雨音に混じって、Rock Bottomのアルペジオがかすかに聴こえてくる。ゆっくり枕の下に手をすべり込ませて、音を奏でているSOL22を引っ張り出す。目覚まし代わりに鳴らしているのは、アルバムDouble Platinumからのカットで、Sheのイントロに使…

官兵衛じゃなくて・・・

半年に一度、極度に忙しくなる時季がやってくる。 「期末ですから」の一言で仕事が舞い込んで、何でもかんでもうなずいていたら・・・いくつも掛け持ちする破目に。今じゃいったい自分で何をしているのか、さっぱりわからなくなってしまった。働き始めてから…

洗車 2/2

高圧洗浄機に頼るでもない、陽射しの揺らめく中、こうして両手を使ってマシンを泡立たせるのは、何年ぶりになるんだろう・・・。ducatiからktmに乗り換えて、オフロードマシンばかりが集う我が家。モトクロッサーを手に入れてからは洗車もすべて“ジェット噴…

洗車 1/2

爪の先を切り落したような三日月が、漆黒の闇に浮かび上がる。その隣に、一粒の星が瞬いている。昼の名残が、夜空を照らす――。 すっかり晴れ上がった空は、高く青く、秋風にうろこのように細かな雲をすべらせていた。外に出ると、太陽の光が風に揺れて、ほど…

Cloudy day

月曜から金曜まで、昼間の空はびっしりと雲に覆われて、ちっとも動くそぶりを見せなかった。夜になっても空は、黒く台地の湿り気を包みこんだまま、丸五日が過ぎていった。夏の光の時間は静かに短くなり、雲の上にいる太陽も、その軌跡をだんだんと低く変え…

北の国から

「明日は雨みたいだし、まだ明るいから・・・襟裳岬、行っておこうかな?」 「あと40kmで・・・黄色い看板が目印って言われたんだけど・・・真っ暗で何も見えないんだ」 上陸初日。苫小牧港から国道を南下して、岬を目指すか、ショートカットするか、なかな…

いつもの夏を

昨日の朝、バイクの上で目が覚めた・・・。 正しくはKX85-Ⅱのシートの上、めずらしくスターティングゲートを、バーの前から後ろに向かって、両足を交互にバタつかせながらKXを下げていく。薄く刻まれたワダチにリヤタイヤを合わせる暇もなく、すぐにバーが落…

雨もまた・・・

ずぶ濡れになって道東を走るryoに半分くれてやっても、まだ有り余るほどの熱気。午後には広がると言っていた雲は消えてなくなり、東に覗く空は、青が生きた水色をしている。雲はひとつも見えない。差し込む光は斜めに倒れて、往く人の影が、だんだんと長く濃…

Riding high! 3

<8/5の続き> それでもまだ、手を伸ばせば触れそうな背中を見つめ、左足がシフトペダルを蹴り上げる。2速。握り直した右手が、スロットルを動かなくなるまで締め上げて、第1コーナーに視線を戻したときだった――。ゴーグルレンズの右隅に、倒れたマシンから…

Riding high! 2

スターティングゲートの小さな留め金が、地面に向かってかすかに動いた――。 瞬間、グリップを外から包みこむようにして握っていた右手が、さらに手前に引かれ、左の人差し指と中指の二本が、引きつけていたレバーをスパッと放す。反応はまずまず、悪くない・…

Riding high!

ざりままが手にしたパラソルの下、遠く離れた第1コーナーに視線を流していく。程よく湿った褐色の直線、小さな水たまりに陽射しが跳ね返る。目の前の壁を右に避けて上るカーブの先には、薄雲にさえぎられた浅間山の裾野が広がっている。この数分後、思いがけ…

来間大橋 2/2

その真ん中を背に、ゆるやかな弧が白くなめらかに海を這う。空の青は光に溶け出し、サンゴ礁はガラスに包まれたように、そのままの色に輝いている。誰もいない砂浜から伸びたアスファルトが、細い線になって対岸へと届く。宮古島と来間島にかかる1690mの舗装…

来間大橋 1/2

今までに足を踏み入れたことのない県が二つある。一つが佐賀県。40になる前、“リフレッシュ休暇”と名のついた一週間の休みをもらって九州を走旅したとき、ついに行きそびれてしまったところだ。まだ、曲がりくねったアスファルトの上を走ることに夢中だった…